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その日の夜。
私はベッドの上でゴロゴロしながら、口角を上げていた。
理由はもちろん、悠里くんにチョコを直接渡せたからだ。
千晴と別れてから、悠里くんと駅までの道中、私たちはずっと揉めていた。
私がチョコを悠里くんの家に渡しに行くか、悠里くんが私の家にチョコを受け取りに行くか、で。
本当にお互いに一歩も引かず、話は平行線だったのだが、最後の最後には、悠里くんが折れてくれた。
そして私は念願叶い、この手で直接悠里くんにチョコを渡せたのだ。
…もう食べてくれたかな、チョコ。
天井を見上げながらもそう思う。
私からチョコを受け取った悠里くんは、本当に嬉しそうに笑っていた。
サラサラな黒髪から覗く、悠里くんの瞳は、私のチョコを大事そうに見つめていて、とてもとても甘かった。
玄関と月の灯りという小さな光源だけでも、キラキラと輝いていた眩しい推しの姿が、まぶたに焼き付いて離れない。
ああ、あんなにも眩しい存在が私の彼氏で、しかも私を好きだと言ってくれているなんて。
「…〜っ」
そう思うと堪らなくて、まぶたを強く閉じて、首をブンブン勢いよく横へと振った。
幸せ者すぎる。
千夏ちゃんと作ったチョコだ。お父さんも千晴も美味しいと言っていたし、きっと悠里くんも美味しく食べてくれているだろう。万が一もないだろう。
「ふふ、へへへ」
悠里くんのことを考えて、変な笑い声を出していると、ピコンッと、スマホから通知音が鳴った。
なんだろう?まさか悠里くんから何か連絡が?
チョコ美味しかったよ、とかさ。
…なんちゃって。
幸せな気持ちのまま、なんとなく、隣に置いていたスマホを手に取る。
するとスマホの画面には、連絡アプリからの通知が映し出されていた。
しかも悠里くんからのだ。
あ、あ、あ、当たっちゃったー!!!
悠里くんからのだー!
思わぬ展開に嬉しくて、私は早速通知をタップした。



