「柚子の彼氏は誰?」
「え、あ、ゆ、悠里くんです…」
悠里くんからの予想外な質問に、あたふたしながらも、私は何とか答える。
そんな私に悠里くんは続けた。
「柚子が一番好きなのは?」
「悠里くんです」
「…うん、そうだよね」
ぎこちなく頷いた私の耳に、悠里くんの柔らかい声が入る。
それからゆっくりと私の目を覆っていた悠里くんの手が離された。
視界が戻ったと同時に、今の悠里くんの様子が気になって、後ろを振り向く。
「…?」
そして、視界に入った悠里くんに私は首を傾げた。
こちらをまっすぐと見つめる悠里くんが、どこか仄暗い瞳で、優しく笑っていたからだ。
その表情が何故かとても辛そうで、胸がざわついた。
どうしたんだろう…?
推しの原因不明の異変に、不安が広がっていく。
どうしたの、と今まさに聞こうとした、その時。
悠里くんはいつもの優しい笑顔を私に浮かべた。
まるで先ほどの今にも消えてしまいそうな笑顔が嘘かのように。
「それで華守が言ってたこと詳しく聞いてもいいかな。なんで華守の家でチョコ作ったの?なんで華守にもチョコをあげたの?それも俺よりも先に」
あれ?
怒っていらっしゃる?
いつも通りの笑顔に見えた悠里くんから、何故か見えない圧を感じて、目をぱちくりさせる。
き、気のせいかな…。悠里くんが怒る要素なんてないし…。
よくわからない怒りを感じながらも、私はあくまで冷静に説明を始めた。



