推しに告白(嘘)されまして。




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千夏ちゃんとバレンタインチョコ作りをした、次の日。
バレンタイン当日の放課後。
今日もお互いの予定が合い、寒空の下、下駄箱前で悠里くんのことを待っていると、とんでもなく大きい袋を二つも下げた悠里くんが現れた。
その袋からは溢れんばかりのチョコらしきものが見えている。

チョコを大量に抱える悠里くんに私は思った。

私の推し、すごい。
さすがバスケ部の王子様だ。人気者すぎる。



「す、すごいね、悠里くん…!さすがすぎる…!」



みんなから愛されている推しに、私は何だか誇らしい気持ちになった。
まるで自分のことのように嬉しいと思える。
私以外にも、こんなにもたくさんの人に愛される悠里くんはやはり素晴らしい人間なのだ。

ふふ、と悠里くんを見て、得意げに笑っていると、悠里くんはそんな私に苦笑いを浮かべた。



「そうなっちゃうか…」



どこか物欲しそうに私を見る悠里くんに、私は首を傾げる。
何かを求められていることは何となくわかるのだが、それが一体なんなのかは全くわからない。

推しの願いなら何でも叶えたいのに…。

悠里くんの視線の示す意味がどうしてもわからず、うんうんと首を捻り続けていると、悠里くんは言いづらそうに口を開いた。



「俺、柚子からのチョコ、楽しみにしてたんだけど…」



じっとこちらを見つめる悠里くんは、何といじらしくて、可愛いのだろうか。
全く意識していないのだろうが、私の様子を伺った結果、自然と上目遣いになっている悠里くんの視線は甘く、何とも危険なものを孕んでいる。

イケメンで、かっこよくて、可愛いなんて、私の推しは反則級の要素を兼ね備えすぎている。
健康に良すぎる。長生きしちゃう。100歳を軽くオーバーしちゃう。