「な、何?びっくりしたじゃん」
大変迷惑そうに千晴を見れば、千晴はおかしそうに笑った。
「俺、ずっと先輩のこと呼んでたんだけど。でも、先輩全然反応してくれないし。ここまで来てやっと反応してくれたんだよ?」
「…え」
無表情ながらだが、どこかおかしそうな千晴の視線に、思わず言葉を詰まらせる。
普段ならそんなことはない、と言い切れる場面だ。
…だが、今の私は上の空で、さらにはお昼休みのとんでもない出来事のことまで考えていた為、何も言えなかった。
おそらく千晴の言い分の方が正解なのだ。
「…」
申し訳ないと思いながらも、改めて、千晴を見れば、千晴は気だるげにこちらを見ていた。その瞳を何故か楽しそうに細めて。
誰よりも整った顔に、綺麗な金髪。
モデルのような高身長に、長い手足。
風紀委員室で佇む千晴は、何故かとてもキラキラしているように見えた。
窓から射す夕日が千晴をそうしているのか。
何故か眩しい千晴に、私は首を傾げた。
考えても考えても、キラキラの原因が全くわからない。
もしかしたら、疲れで、視界がチカチカしてしまっているのかもしれない。
そう思った私は、とりあえず、目を擦ってみた。
「…で、何、思い悩んでるの?」
そんなことをしていると、気がつけば千晴は、私の目の前にある大量の資料が置かれた机に軽く腰掛け、興味深そうに私の顔を覗き込んでいた。
どうやら、私の様子を見て、私が〝何か〟に悩まされていることを察したらしい。
私は何故かキラキラと輝いているように見える千晴のことを一旦、頭の隅に寄せ、「実は…」と重たい口を開いた。
そして、悩みの原因を全て千晴に話した。



