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部室から飛び出し、校舎内を駆け回る。
柚子がいそうな場所を片っ端から探し続け、数十分が過ぎた頃。
ついに俺は柚子の姿を見つけた。
「スカートが短すぎる。今すぐ直しなさい」
2人の女子生徒の前に立ち、厳しい声を出している柚子の背中に俺は迷うことなく、ずんずんと近づく。
俺の存在に気がついた女子生徒たちは、顔面蒼白のまま、けれど驚きを隠せない様子で、柚子と俺を忙しなく交互に見つめていた。
だが、柚子はそれでも後ろから迫る俺に全く気づくことなく、注意を続けていた。
「ちょっと柚子借りていい?」
そんな柚子の肩に俺は後ろから触れる。
すると柚子はビクンッと肩を弾ませ、「…っ!?」と声にならない悲鳴をあげた。
「「は、はい!ど、どうぞ!」」
俺の言葉に女子生徒2人は何度も何度も頷いている。
「ありがとう。じゃあ、柚子、ちょっといい?」
「へ?え?」
俺は女子生徒2人にお礼を言うと、あまり状況を理解していない様子の柚子の手を引いて歩き出した。
大きなその目をぱちぱちさせ、不思議そうにこちらを見ている柚子が可愛くて仕方ない。
こんな時でさえもそう思える俺はやはり相当柚子が好きなようだ。



