「悠里くん!ごめん!」 軽やかだった足取りは、いつの間にか駆け足に変わっていた。 「柚子、早いね」 私を見つけて、微笑んだ悠里くんから白い息が漏れる。 ああ、推しが寒そうだ。 なんたる失態。 「ご、ごめんね。待たせちゃって」 申し訳なさすぎて、あわあわしていると、悠里くんはそんな私に表情を和らげた。 「いや、俺が早く来ただけだから」 それだけ言って、「行こう」と悠里くんが私の手を引く。 冷たい指先に、私は胸がぎゅうと締め付けられた。 この冷え切った手を私が温めなければ。