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約2時間の仕事を終えた後、私は今度は自分のクラスの出し物の仕事をしていた。
私たち2年の進学科の出し物は、廃校になった過去の鷹野高校から脱出する、という内容の脱出ゲームだ。
会場は、第二校舎の3階と4階の教室全てで、各教室には、様々な謎が隠されている。プレーヤーとして参加する人たちは、その各教室にある謎を解きながら脱出を目指すのだ。
脱出ゲームをスムーズに進行する為に、各教室には、2年の進学科の生徒が1人から多ければ4人ほど配置されていた。
ボロボロのカーテンに薄汚れた黒板。
並べられた机や椅子は乱雑で、倒れているものさえもある。
さらには、古びた教科書やノートまでも散らばっており、もうここは何年も教室として機能していない、とわかる場所に私はいた。
私のここでの仕事は、決められた場所で、決められたセリフ、行動をする、というものだ。
私は決められた場所、窓際にある椅子に腰掛け、本を読むフリをしながらも、プレーヤーがここに来るのを待っていた。
すると、何人かのプレーヤーである生徒たちが、この教室へと入ってきた。
それから私の存在を気にしながらも、探索を続け、私におそるおそる話しかけてきた。
「あ、あの…。何かヒントってあったりします?」
本から視線を上げると、伺うようにこちらを見る女子生徒と目が合う。
私は淡々と決められていたセリフを吐いた。
「あの子には好きな人がいた。これを…」
それだけ言って、机から一枚の紙を出す。
この紙こそが、謎を解く重要な手がかりになるのだ。
私から紙を受け取った女子生徒は「ありがとうございます!」と言い、一緒にいた他の生徒とその場から離れた。
そしてそれを見ていた他の生徒が、先ほどの女子生徒と同じように私に話しかけてきた。
なので、私は全く同じ対応をした。



