「遠慮しないで?悠里くんに食べて欲しいの」
私は笑顔でそれだけ言うと、スプーンにオムレツを一口分入れて、悠里くんへと差し出した。
こうすればもう受け取って食べるしかないだろう。
私の行動に何故か悠里くんは頬を赤らめた。
その綺麗な瞳は動揺で揺れており、困惑している。
何故?と、疑問に思いながらも悠里くんの瞳を覗くと、悠里くんは意を決したように一息ついて、パクッとスプーンからオムレツを食べた。
「…え」
悠里くんの突然の行動に声が漏れる。
「…美味しい」
恥ずかしそうにそう言って柔らかく微笑んだ悠里くんに、私はスプーンを差し出したまま、固まった。
ゆ、悠里くんが、わ、私のスプーンからオムレツを食べた?
あーん、しちゃったの?私が?
悠里くんに?
徐々に状況を飲み込み始めた私に、恥ずかしさやときめきが嫌というほど押し寄せる。
推しが尊すぎて、苦しい。
顔を真っ赤にして、微動だにしなくなった私を、悠里くんは心配そうに見つめた。
「え?どうしたの?柚子?」
動かない私の目の前で、悠里くんが軽く手を振る。
その姿を見て、私はやっとまばたきをした。



