side柚子
沢村くんから放たれたシュートが綺麗な弧を描き、まるで吸い込まれていくようにゴールへと落ちていく。
それから審判のホイッスルがピッピッと鳴り響いた。
ーーーー得点だ。
そう理解した瞬間、会場中が沸いた。
「す、すごい!今の決めるの!?」
「かっこよすぎねぇか!」
「いいぞー!悠里ー!」
鷹野高校の生徒だけではなく、華守学園の生徒までも先ほどの沢村くんのワンプレーにどよめき始める。
そしてそのまま2点リードで試合は終了した。
「…〜っ!!!!」
おおおおおお、推しが!沢村くんが!かっこよすぎる!
さすがすぎる!
私は沢村くんのすごさ、尊さ、かっこよさ、存在、全てにやられて、周りと同じように、だが、1人で静かに興奮していたのであった。
*****
試合終了後、両校が落ち着いたところを見計らって、私は階段を降りていた。
もちろん沢村くんに一言声をかける為だ。
私と一緒にいた雪乃は今この場にはいない。
当初の予定通り、他校のイケメンと合流中だからだ。
コート内が見える扉の前まで来て、中を覗くと、そこには部員に囲まれて、笑っている沢村くんの姿があった。
…やはり、とてもとてもかっこいい。
普段の沢村くんもかっこいいが、今日の本気でバスケをする沢村くんもまたいつもと違ったかっこよさがあった。
真剣な姿も、光る汗も、華麗なプレーも何もかもよかった。
あんなにも尊く、素晴らしい存在を私は知らない。
真剣にバスケをする沢村くんのことを知らなかった今までの私は、どうやら人生を半分損していたようだ。



