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「今のままではダメなことくらい自分たちが一番わかっているだろう?エースの調子が悪い時に崩れるチームじゃあ、全国ベスト8を狙うどころか、地区大会優勝すらも危ういぞ」
俺たち選手に囲まれて、鷹野高校バスケ部の顧問が難しい顔をする。
顧問の言っていることは至極真っ当で俺たちは深刻な顔でそれぞれが頷いた。
第二クォーターが終わり、ハーフタイム。
俺たちは顧問の指摘通り、あまり褒められた試合はできていなかった。
本来ならかなりの点差をつけたい相手なのだが、その点差が一向に広がらないのだ。
試合内容はずっと拮抗しており、華守学園にリードされてしまう場面さえもあった。
何故、そうなってしまったのか。
原因は二つある。
一つは、あちらに華守がいることだ。
華守は予想通り、かなりの実力者で、うちのバスケ部にいてもレギュラーになれるほどの力を持っていた。
そんな華守を中心に底上げされた華守学園は実に厄介で、中堅とは思えないバスケをしていた。
そして原因二つ目。
きっとこちらの方が大きい。
俺のシュートが一本も入らないのだ。
今までいろいろな試合をしてきたが、こんなにも不調なのは初めてだった。
うちの高校のエースだと言われている俺は、もちろん他の部員よりも多く、シュートチャンスを作る。
そのシュートチャンスの度に、ボールをいつものようにゴールへと投げるのだが、それがゴールネットを揺らすことはまだ一度もなかった。
打てども打てどもシュートが入らない。
いつも通りなはずなのに、どこかが違う気がして、違和感を覚えずにはいられない。
けれど、その違和感が何なのか全くわからない。
やがて呼吸の仕方もよくわからなくなり、息苦しくなる。
胸の辺りがモヤモヤして、吐き気までする。
部員の誰かに渡されたスポーツ飲料の入ったボトルに口をつけ、何とか喉に通す。
視界が揺れている気がして、どうしたらいいのかわからなくなった。



