ねぇ、星見ませんか?

「ねぇ、今日の夜時間ある?よかったら星見ようよ!」

「……はい?」

突然、名前も知らないクラスメートの男子に誘われたことに望月美織(もちづきみおり)は首を傾げた。美織の前には癖っ毛が特徴的な男子がニコニコと笑っている。

「今「はい」って言った!?来てくれるの!?」

男子の大きな声に周りにいた他のクラスメートたちが怪訝そうな目を向ける。美織は恥ずかしさで一瞬にして顔が赤くなるのを感じた。慌てて男子の手を掴み、教室を出て廊下の隅まで歩く。

「大声出さないでよ!あと、失礼だけどあなた誰?」

「え〜……。クラスメートになってもう一ヶ月は経つんだけど、俺の名前知らなかったの?」

男子が叱られた犬のようにシュンとする。その態度に美織の胸がズキッと痛みを発した。クラスメートの名前をほとんど覚えていないのは事実である。

美織は一ヶ月前、両親の仕事の都合で北陸地方からこの県へ引っ越してきた。友達も親戚も知っている人が誰もいない街である。