言葉通り鈴原さんは私を送り届けてくれて、
「では戸締りをきっちりしてくださいね。宅配便などは局留めにしてセンターに取りに行きましょう」と提案もしてくれた。とても頼もしいし、ありがたかった。
鈴原さんは家に上がろうとはせず、またも私が部屋に入るのを見届けるとすぐに帰って行った。
私は言われた通り鍵を掛けチェーンも掛けると、明かりとテレビを付け、部屋のカーテンが閉まっているのを確認して、そして
カラーボックスの中に入れっぱなしになっている四角い鏡を適当な大きさの段ボールに仕舞い入れた。洗面所もバスルームも四角の鏡がはめ込まれていて、その一面にガムテープを張り、映さないようにした。
「これで大丈夫よ……」
事件も、陽菜紀の幽霊にも―――これで怯えなくて済む。そう思うとその日はちょっと安心したのか、早く眠りについた。
けれど眠っても、夢に現れたのは陽菜紀だった。だけど全然怖くないし、そもそも過去の―――私が通った日々の夢だった。それはどれも楽しいもので、はじめて陽菜紀の家で彼女と手作りクッキーを作っていたり、写生会で並んでお花の絵を描いていたり、流行りのホラー映画を観たあと二人して怖くて、手を繋ぎ合って帰ったり。
目まぐるしく記憶の断片が蘇る。
やがて記憶の欠片は、小学校何年生だったか忘れたが、理科実験室で実験の授業の様子を映しだした。何の実験だったか覚えがないがアルコールランプを使ったのを覚えている。何人かグループを作って実験すると言う趣旨で、陽菜紀と私は当然同じグループだった。
そのアルコールランプを陽菜紀が誤って倒して、火のついていたアルコールランプが私の手を掠めた。幸いちょっと触れた程度だったから大した火傷も負わなかったが、陽菜紀は顔を真っ青にして
「灯理!!ごめんね!!
ごめんなさい!」
ごめん、と泣きそうになりながら何度も私に謝ってきた。意図してやったことじゃないし、ちょっとしたアクシデントだ。私はそもそも怒ってないし、大した怪我でもなかったが、その日の夜、陽菜紀が陽菜紀のおばちゃんと二人で菓子折りを持ってうちに来たのを覚えている。
陽菜紀はそこでも謝ってきたが、私は「大丈夫だよ」と言って陽菜紀を宥めた。私の母も特に怒ったわけでもなく「実験中のトラブルなんてよくあることよ。気にしないで」と佐竹母娘に笑っていた。
そう言うわけで事態は収拾したわけだが―――……



