陽菜紀のSNSは鍵が付いていない。つまり誰でも閲覧可能だと言うことだ。そこで人気者の陽菜紀を殺して利用してさらに犯人は目立つかもしれない。きっと自尊心も満たされるだろう。
人を殺して自らの欲求を満たす、なんて私には考えられないことだが。
「まだ犯人は見つかっていません。灯理さんも十分に気を付けてください」と鈴原さんに至極真剣に言われ、私はごくりと喉を鳴らした。
気を付ける―――と言っても、どうすればいいのか分からない。でも今までのどの犯行現場も無理やり押し入った形跡はなく、ようは外部の人間が来ても扉を開けなければいいのだ。
「分かりました。ありがとうございます」私は礼を述べて頭を下げると
「犯人が捕まるまで、俺しばらく灯理さんを送っていきますよ」と言われて私は目をまばたいた。
「いえ…!それは流石に悪いです」と慌てて手を横に振ると
「俺は一人暮らしだし、これと言ってやることもないので、大丈夫ですよ。それにほら、不審なメールも来たわけだし」と鈴原さんは真面目に言って
確かに、あのメールの謎はまだ解けていない。
もし……もし、次のターゲットを私に定めているのなら―――……
考えただけでもぞっとした。
「……あの…では、お願いしても宜しいですか…?」おずおずと申し出ると、
「ええ、任せてください」と鈴原さんはここにきてようやく笑顔を浮かべて、その笑顔に気が緩んだ。「大丈夫です、日本の警察は優秀だと聞きますし、七年前より化学や技術も発達してます。すぐに証拠が出てきますよ」と鈴原さんは付け加えて、私もそれに頷いた。
大丈夫―――犯人が捕まるまでの間だけよ。
それに鈴原さんは単に陽菜紀を守れなかった責任を感じているだけ。優しくしてくれるのはそれだけよ。
自分に言い聞かせ、それでも私は店内にあるあらゆる四角いものを見ることができなかった。



