■□ 死 角 □■


鈴原さんはごく自然に私の隣の席に腰掛けてきた。まぁ知らない仲ではないし、ここで敢えて他の席を選ぶのもちょっと…と思ったに違いない。他意はないのだ。しかも正直、この場で会えると思ってなかったからちょっと驚きだ。

「す、鈴原さんも今日お休みで?」と聞くと
「はい。有休とりました。陽菜紀とは本当に最後になっちまうから―――ちゃんと別れを言いたかったんで」

と鈴原さんの目はまっすぐに陽菜紀の遺影を見つめていた。その横顔を眺めていると、ふと鈴原さんが振り返った。慌てて顔を逸らそうとするも、鈴原さんは私の向こう側にいる沙耶ちゃんの方を見ていて

「はじめまして、鈴原と申します。陽菜紀の同級生ですか?」と沙耶ちゃんに聞き
「ええ、小学校と中学が一緒で。そちらは?」と沙耶ちゃんが鈴原さんに聞きかえすと
「僕は陽菜紀とバイト時代の悪友みたいなもんです」と鈴原さんは苦笑を浮かべる。そう言えば、陽菜紀のアルバイト時代の人も鈴原さんしか見ていない。私の友人同様、急なことで休みが取れなかったり都合がつかなったりしたのかな。

なんてことをぼんやり考えていると

「あの、不躾なことを聞いて申し訳ございませんが」と沙耶ちゃんが前置きして……と言うか流石キャリアウーマンは話し方もソツがない。


「どこかでお会いしました?」


との質問に鈴原さんも私も目をパチパチさせた。
「いえ。はじめてお目に掛かりますが…」と鈴原さんがちょっと不思議そうに首を傾け

「好未ちゃんも昨日そんなようなこと言ってたけど…ほら、今売れてる爽やか俳優さんに似てるんじゃない?」と私は鈴原さんに聞こえないぐらいの小声で沙耶ちゃんにこそっと俳優名を伝えた。
「そう?そう言われればそうかもしれないけど」と沙耶ちゃんはどこか納得のいっていない様子だったけれどあまりじろじろ見るのも失礼だと思ったのか、その話題はすぐに消沈した。
そんなことを話していたからあっという間に式がはじまる時間になってしまい、木魚の音を鳴らしながら豪華な袈裟を着たお坊さんが登場した。