■□ 死 角 □■


幽霊―――……

なんて見たことがない。見たいとも思わないけれど。
確か……故人は命日を含めて七日目に三途の川にたどり着くとか。だからまだ陽菜紀の魂はこの世に留まっているはず。

陽菜紀―――

と考えていると灯したスマホが自動省エネモードで暗く画面が落ち、カーテンの隙間から覗いた僅かな月明かりに反射して、その画面にうっすら自分の姿が映し出されていた。
幽霊―――…なんて出ないと思うけれど、何となく暗い部屋に一人だと心細くなって気休めに部屋の明かりを灯してみる。そうなるといよいよ目が覚めて、私はスマホを開けると、さっき好未ちゃんと麻美ちゃんが言っていた優ちゃんのSNSを覗きにいった。

こんな……こそこそ他人のプライベートを覗き見するのはどうかと思ったけれど、でも気になると最後。どうしても見たくなった。

そもそも優ちゃんのアカウントは鍵が掛かっていない、誰でも見られるものだったから、好未ちゃんが言ったように優ちゃん本人も見られたがっているのだろう、と言い訳をしながら優ちゃんのSNSを見ると、さっき好未ちゃんが見せてくれた今日のお通夜のことから、それから数分後にまた新しい記事がアップされていた。

“同窓会きてまーす”
と一言書かれていて、居酒屋の料理とそのお皿を持つ優ちゃんのどこか誇らしげな顔が今度は堂々と映し出されていた。

『友達の死さえも利用するのはどうかと思う』麻美ちゃんの言うことはもっともだと思う。けれど反応は上々で「いいね」がたくさん押されていて、その下のコメント欄に他のユーザーからのコメントがいくつかぶら下がっていた。そのどれもが優ちゃんに対する慰めの言葉だった。
因みに同じSNSを利用しているだろう好未ちゃんと麻美ちゃんからのアクションはなかった。

人、一人亡くなっているのに、一方ではお祭りのように事態を騒ぎ立て、それを利用しているのかまた悲劇のヒロインが誕生した。
何だか途中から気分が悪くなって、私はそれから顔を背けるようスマホを裏返し、布団にもぐりこんだ。

スマホもまた四角だった―――