■□ 死 角 □■


林間学校二日目の夜、天体観測とかで夜8時から望遠鏡を覗いて観察記録をする、と言う課題があった。
この日は晴天。山の中にある夜空は空気も澄んでいて、星々がきれいに輝いていた。
その課題は男女でペアになって、二人で記録をつけるというものだった。

そのペアはくじ引きで決められ、私の相手はヤマダくんだった。本当に偶然。
ほんのちょっと嬉しいのと、何でもっとこうゆうチャンスが早くなかったのだろうと恨みがましいのと、私の中は複雑だった。

それでも緊張した面持ちで私は憧れだったヤマダくんと一緒に天体観測をすることになり、大きな天体望遠鏡を覗いていたヤマダくんが

「あ!」
と声を挙げた。

「え?なに?何か見えた?」と記録をとっていた私が顔を上げると
「あそこで光ってるのがある。あれ、何だろう」
ヤマダくんは空を指さし、私は与えられた天体図と夜空を見比べて、位置的にそれが金星であることが分かった。
「あれ、金星みたいだよ。ほら、別名、明の明星(あけのみょうじょう)だって」

私が天体図に指を置くと、
「え?どれ?これ?」とヤマダくんの指が天体図の上を走り、一瞬……

ほんの一瞬だけ、ヤマダくんの指と触れた。
びっくりしたのと、忘れかけていたふわふわくすぐったいような不思議な感覚に戸惑った。

ヤマダくんの手はすぐに離れていった。

「ご、ごめん……」

何に対して謝られてるのか分からなかったけど、そのときの私は「うん」と答えるしかできなかった。
ヤマダくんとのきれいな想い出はそこで途切れている。

何故か?

その次の日、

陽菜紀とヤマダくんが付き合うことになったからだ。
私の「二度目の初恋」は砂糖菓子よりも、もっともっと甘くそして儚く溶けていった。

陽菜紀……同い年は好みじゃないって言ってたのに。



どうして