近くで女性の悲鳴があがった。その声は店の外で発せられたろうが、店内まで届くぐらい大きなもので店内に居た客も、店員さんも何事か窓から店の外を眺めている。
曽田刑事さんもそのうちの一人だ。
「何だ…?」
やがて叫び声は一人二人と増えていき、曽田刑事さんが鋭い視線を窓の外に向けた。
「どうぞ、行ってください。きっと何か事件かもしれません」
私が促すと曽田刑事さんは立ち上がり
「ちょっと様子見てきます。中瀬さんはここに居てください。危険なら応援を呼びますからここから離れないで」
と真剣なまなざしで言い置いて、身を翻す。
ええ、ごゆっくり。
と言葉は言わず、私はテーブルに置かれた伝票を手に立ち上がった。
レジに近づくと叫び声に気を取られていた店員さんの一人が弾かれたように身を翻し、慌てて私から伝票を受け取る。
そして金額を打ち込む際に
「あの……お連れ様は戻られないのですか?さっき運んだばかりですが」と親切に曽田刑事さん分のコーヒーを目配せ。
「ええ、大丈夫です。きっと長くなるから」と微笑むと
「さっき悲鳴が聞こえましたよね。事件ですかね」と店員さんが金額を打ち込みながらまるで世間話のように私に聞く。
「さあ、でも世の中物騒ですものね」
「そうですよねぇ。あの…でも今出て行って大丈夫ですか?」とどこまでも親切な店員さん。
「大丈夫ですよ」
もう全て終わったので、と心の中で呟き私は店の外に出た。
空は清々しいまでの晴天だ。風一つ吹いていない。
近くで悲鳴のような喧騒が徐々に広がっている。
私はその騒ぎの反対側に歩き出し、鼻歌を歌いながら
歩いた。



