「陽菜紀の計画がまとまると、あの子はすぐに実行したわ。お金持ちの男の人に近づいて、まんまとセレブ奥様の座に落ち着いた。そこも憎らしかったわ。
あの美貌と行動力をフル活用して、百戦錬磨な所を見せつけられて嫌気がさしたわ。
私は未だに五年付き合ってる彼氏から結婚の“け”の字も出てこないぐらい、ぐだぐだしてるのに、あの子はいとも簡単にやりのけた」
「それは―――完全な八つ当たりじゃない。羨ましかっただけでしょう」
呆れたように吐息をつくと
「あんたに何が分かるって言うのよ!」と、好未ちゃんはバンっと勢いよくテーブルを叩き、その音に何事か数人居た周りの客たちの視線が集まる。私はその視線に気づかないふりを決めた。
『くだらない』
いつだったか……そうだ、あれは陽菜紀のお通夜の日、同窓会と名の付く飲み会で覚えた感覚だ。
陽菜紀はそんなくだらなくて、浅はかで、身勝手な好未ちゃんの気持ちに殺されたようなものだ。
陽菜紀が立てた計画も、鈴原さんが殺人を犯したのも、好未ちゃんのこの“くだらない”感情からきたものだと思うとやりきれない。
人間は何と愚かな生き物なんだろう―――
「でも私は殺人に手を染めていない。ただ、後押ししただけよ。それも陽菜紀の計画の後押しをね。山田くんの殺人についてはノータッチよ」
好未ちゃんはどこか勝ち誇った笑みを浮かべて、1,000円札をテーブルに置くと立ち上がった。
「私を呼び出したのは、今話したことを聞きたかったからでしょう?もう話したから用はないよね」と言いバッグを肩に掛ける。



