「陽菜紀の気持ちは、こっちが気持ち悪くなるぐらい理解しがたいものだったわ。
中学卒業後…高校は違ったけど偶然会って、一度二人で飲んだときがあったの。陽菜紀はだいぶ酔ってて、あんたが好き、とかほざいてた。告白されたとき戸惑ったわ。
それで、どうしてもあんたと一緒に居たいけれど何か方法がないかと聞かれたとき、思い浮かんだわけよ。
これで絶対的女王の座に居る陽菜紀と、あんたと言う目障りな存在を一気に引きずり落とせるって」
私にとっては好未ちゃんの告白こそが、理解しがたいものだ。
「嫌いだったら会わなければいいだけでしょう。私たちは中学まで一緒だったけれど高校に行ってからほとんど連絡も取ってない希薄な関係だったじゃない」
と、負けじと私も言い返すと、好未ちゃんはちょっと身を乗り出して笑顔を浮かべ声を低めた。
「まだ分からないの?私はあんたがただ単に嫌いじゃなくて、消えてほしいぐらいなの。存在自体が嫌なの」
「……どうして…?私、好未ちゃんに何かした?」
こうまで恨まれる覚えはない。
「何か?これと言って特別な出来事はなかった。
ただ目障りなの。あんたたち二人が」
目障り―――……そんな理由で?
眉間に皺を寄せ好未ちゃんを見据えると
「陽菜紀は確かに人気があった。常にクラスの中心にいたし、男子のほとんどが陽菜紀を好きだった。美人で話上手で、きどらなくて。
中学を卒業した後も陽菜紀の人気は他校の私が通う高校まで噂が回ってきた。当時クラスの男子に何回も『佐竹 陽菜紀と同中だったんだって?』と聞かれたし『東高の佐竹 陽菜紀と合コンできる!』ってはしゃいでた男子もいた。
うんざりしたわ。中学を卒業したら陽菜紀の女王の権力を見せつけられることはないと思ってたのに。
そう、いつだって私は行く先々陽菜紀の存在を見せつけられる。逃げようとしても逃げようとしてもあの子の存在は消えなかった。
だけど私は優子のようになりたいとは思わなかった。高校デビューして陽菜紀を追い越そうとしたって無駄よ。だって優子の場合所詮“造り物”なんだもの。結果、陽菜紀の幻影を追って援交するまで落ちぶれたけどね」
援助交際―――その噂も好未ちゃんが発信元だった。あれは本当だったんだ。
でも、陽菜紀の人気を羨んでいるのなら私を憎むことにどう繋がっていくのは分からない。



