「それだけじゃない」
と鈴原さんは静かに言い、まだ何か隠された事実があるのかと、私は彼の言葉に耳を傾けた。
「マスコミには公表されていないが、被害者たちの靴を一足、しかも右だけ持ち去った」
何故―――……と言う私の疑問を読み取ったのだろう鈴原さんが先回りして
「右脚のヒールは君が成人式の日、溝に引っかけて折ってしまった方だ。俺にとって運命の再会のシルシでもあった」
運命の再会の印―――だなんて……考えただけでも恐ろしくなった。きっと鈴原さんにとって被害者たちの靴の片方を持ち去った理由は、彼の犯行の記念品なのだ。最も忌むべき存在の彼女らを葬り去ったと言う記念の―――
改めて、私がこの事件のキッカケを作ったことを思い知らされて、顔から血の気が引いた。
私は殺された人たちの靴が片方だけ持ち去られていたこと今知ったばかりだ。それはマスコミにも公表されていなかったこと。だから私が知らなくて当然で…
でも
曽田刑事さんは見抜いた―――……
私はごくりと喉を鳴らした。
急がねば……真実を全て彼の口から聞きだす前に曽田刑事さんたちがここを嗅ぎつけたら、
鈴原さんは逮捕されるだろう。
曽田刑事さんがどこまで知っているのか分からないけれど、私の証言で今までの被害者たちの靴が鈴原さんの自宅から押収されたら流石の彼も言い逃れできないだろう。それ以前に―――日本の警察は優秀だと聞く。時間の問題だ。
「でも……犯行は二年の間で三件、その後五年のブランクがあった。陽菜紀が四件目の被害者となるまで……何故、五年と言う間を置いたの。そして何故、陽菜紀を殺したの」
何故―――……たくさんの『何故』が浮かんできて私は思いつく限りの疑問を口にした。
「二年間で三人殺してその後五年と言うブランクがあったのは、最後の犯行で、
いくら君に似た女を見つけたところで、やはり君以上に魅力的で夢中になれる女は今まで居なかった。探すこと自体無意味だと思った。
君の代わりはいない。俺がたった一人愛した人は
君だけなんだ」



