「とにかく陽菜紀の当てつけ攻撃を食らって俺は精神的に少し参ってきた。
陽菜紀はとても無邪気に君とのことを語るんだ。俺は―――……離れていてもずっと君のことが好きだった。新しい彼氏が居ると知って早々諦められるわけでなかったが、でも略奪する勇気もなかった。そんなとき俺にとって転機がきた。
君は気付いてないけれど、俺と君は七年前に一度会ってるんだ」
え―――……?
いつ―――……
私は目をまばたいた。七年前と言うからきっと二十歳のときだろう。でもその年に鈴原さんに会った記憶はない。髪型とか多少は変わっているだろうけど記憶にないなんて……
必死に記憶を手繰り寄せていると、鈴原さんが焦れたように切り出した。顔にはちょっと苦笑を浮かべている。
「成人式だよ。俺は式には参加しなかったけれどその後の同窓会があることはホームページで知っていた。それだけ参加するつもりで会場近くまで行ったんだけど
その会場近くの路肩で君が足元を押さえて腰を屈めていたんだ。溝にヒールを引っかけて折れてしまった……と」
「ああ…!」私は合点がいって手をポンと打つ。
確かあのとき
『どうしました?具合でも悪いのですか?』と声を掛けてくれた男性がいた。私はヒールが折れたことが恥ずかしくて顔も上げられず『いえ、大丈夫です。ありがとうございます』とだけ答えた覚えがある。
「あれは―――鈴原さんだったの?」
あのとき、確かに親切に声を掛けてくれた男の人がいたことは覚えている。でも顔まで見ていない。声は―――……一瞬だったから、記憶に残ってなかったのかもしれない。
―――そう言えば曽田刑事さんも私の靴のことを妙に気にしていた。
何故、ヒールの折れた靴なんかを気にするのか、私には分からなかったけれど……もし、一連の事件のキッカケがここにあるのなら……いいえ、もうその先を推測しないまでも分かり切っている。
きっとこの時……その瞬間。
私は“バケモノ”を生み出してしまったのだ―――



