■□ 死 角 □■


私は優ちゃんに呼び出され、その後彼女が病院に搬送される、と言う事柄を簡単に話し聞かせた。鈴原さんは、陽菜紀から唯一ご主人の浮気のことを相談されていた人だ。顛末を知る必要がある。

『え―――…!旦那の浮気相手、あなたのお友達だったと言うわけですか!』
これには流石に鈴原さんも動揺を隠せない様子だ。声が上擦っている。

『しかも子供まで―――……だから早く離婚しろって言ったんですよ、俺は』

鈴原さんは憎々しく言って、その言葉の裏に陽菜紀を心底心配している様子が窺い知れた。一瞬、聞かせるべきではなかったか、と思ったけれど、ここにきて黙っておく、と言うのも変だ。

『その優子……さんが、旦那の相手だったと言うこと、灯理さんは知らなかったのですか?』と当然ながら聞かれた。私を非難する口調ではなかったが
「はい……私は何も知りませんでした。間抜けにも程がありますよね…」自嘲じみてちょっと笑うと
『そんなことはありませんよ。普通は“不倫”なんて必死に隠すものでしょうし。気づかなくて当然です』と鈴原さんは言ってくれた。その言葉にちょっと救われる。

「あ……でも、友人の話で優ちゃんが誰かの愛人をしてる、とか言ってました。そのときはまさかお相手が陽菜紀のご主人だとは思いも寄りませんでしたが……あれは、誰が言い出したのかな…」

ちょっと考えて

「そうだ……沙耶ちゃんだ…確か好未ちゃん経由で知ったと…」
と思い出した。そう言えば曽田刑事さんも言っていた。ご主人は陽菜紀が殺された次の日に高価な真珠のネックレスを購入した、と。優ちゃんがお通夜のときに『彼氏に買ってもらった』と自慢していたネックレスだと考えれば辻褄が合う。

『沙耶さん……と言うのは、こないだ陽菜紀の告別式に来ていた人ですよね』
「ええ。好未ちゃんは仕事の都合で来れないって……」
『もしかしてその二人は陽菜紀の死の原因を何か知ってるかもしれませんね』

「え―――……?」

私が目をまばたくと

『直接的な犯人を知らなくても、犯行に繋がる何かを知ってる可能性がありますよ』
「そうですね……考えもしなかった。私、ちょっと二人に話を聞いてみます。優ちゃんのことどこまで知ってたのか」何か分かったら電話する旨を言って私は一旦電話を切った。