だけど僕はアイツの存在を許してしまった。
アイツの思いを知り、涙を見て、僕は絆されてしまったのだ。
もう姉さんの隙間に入ってしまったアイツを追い出すことができなかった。



「それでセオドア?もう一度先ほどのことを説明してくれるかな?」



ここはお父様の執務室。
執務室の一番奥の大きなテーブルの椅子に腰掛けるお父様の横に僕は冷たい表情で立っていた。
お父様も同じく冷たい表情を浮かべ、僕と同じ人物のことをじっと見据えている。



「姉さんが使用人の仕事をしていたのも、毒を盛られたのも全部コイツのせいだよ」



僕たちの視線の先にいるのはヴァネッサだ。
ヴァネッサは来客用のテーブルとソファの向こうに立たされて、冷や汗を流していた。



「…べ、弁明させてください。あれはレイラ様ではございません。ただの何者でもない女でございます。そのようなものがあの高貴であり、完璧なレイラ様に成り代わろうなどおかしな話で…」

「黙れ」



ヴァネッサが苦し紛れに言い始めた言葉をお父様が冷たい声で制する。



「あれだと?あの子は私たちの娘、レイラだ。お前たちが使えるべき主人の1人なんだぞ?それをあれとは何事だ」

「…し、しかし!」



お父様に睨まれてもなお、何かを言おうとするヴァネッサに呆れてしまう。
何故、自分が今間違った選択をしてしまったと気づかないのだろうか。