どこも隠そうともせず胸を張る男はレスポンスの早い彼と口論をしても勝ち目がないと踏んだのか、彼の後ろを隠れ場所にしている女性に目をつけた。

 再度目をつけられた女性は短い悲鳴を上げる。目の前の全裸の人間と同性である彼と後輩はともかく、性別の異なる女性、それも狙われている女性からすればこの状況は正真正銘の異常事態に他ならない。底知れない恐怖を感じているからだろうが、見ず知らずのコンビニ店員に縋りついてしまうほどに。

「あ、すみません。あの、コンビニに、全裸の男が来店してきて、すぐ来てほしいんですけど」

「あ、おい、何通報してんだ」

「はい、はい、暴れ回ってる、とかではなく、あ、でも、コンビニに逃げ込んできた女性をずっと追いかけ回してたみたいで。はい、今も、ちょっと、女性が狙われてるんです」

「狙ってねぇ。俺はただ見てほしいだけだって言ってんだろ」

「女性と全裸の男の間には先輩、いや、先輩じゃ分からないですよね。あの、もう一人の店員が入ってくれていて。はい、はい、あ、来てくれるんですか? ありがとうございます。はい、はい、俺の名前ですね。俺の名前は」

 強盗の件で彼が通報した時と同じように、後輩も名前や連絡先などの個人情報を聞かれていた。たじろぐことなく答えてみせる後輩には何も後ろめたいことなどないのだろう。

 男の訴えには全く耳を傾けなかった後輩が子機を置く。その態度から、後輩は全裸の男を、嫌な気分にさせない程度に揶揄してもよさそうなタイプの人間だと判断したことが窺えた。確かにこの全裸の人間は、犯罪者の中でも多くの人に愚弄され軽蔑されそうな雑魚のように思えなくもない。全裸を晒して興奮するような露出狂の変態雑魚男。

「クソが。通報しやがって。おい女、お前が俺の身体を見ずに逃げ回ったせいだからな。覚えておけよ」

「あ、なんすか、逃げる気っすか。絶対逃さないっすよ」