強盗事件然り、また何かよくない事象に巻き込まれてしまいそうな気配を彼は密かに感じていた。どう見ても客として来たわけではなさそうな女性の相手をするのは気が進まないが、この場合、コンビニ店員か否かは関係なく、普通の人間だったら無視はしないだろう。一般社会に溶け込むために、彼は冷静な口調で女性の上がった心拍数をゆっくり下げさせた。

「説明は後でいいです。まず何をしてほしいのか、結論を先に言ってください」

 目が泳いでいる女性を見つめ、簡単な質問を投げかける。錯乱している人間に何があったのかを聞いたところで、しっかりした返答が為されるとは思えない。説明をさせるのは、諸々が落ち着いた後でも遅くはないだろう。

 女性は出入り口をちらちらと気にしながらも、彼の質問に答えようと、意識して息を吸って、吐いた。

「あ、あの、えと、その、た、たすけて、あ、そ、そう、そうです。あの、たすけてください。ぜ、ぜんらのおとこに、あ、あの、お、おいかけられて」

 女性が言ってすぐ新たな客が来店し、三人は出入り口に顔を向けた。その瞬間、女性が悲鳴を上げ半狂乱に陥り、あろうことかレジカウンターを乗り越えようと身を乗り出してきた。入って来た全裸の人間を見た後では無闇に追い返すこともできない。女性はそのままレジ内に転がり込み、近くにいた彼を盾にしてガタガタと震えた。

「おい女、何逃げてんだよ。俺の身体をもっと見ろって言ってんだろ。ほら、ちゃんと見ろ」

「ちょ、先輩、超やばい奴来たんすけどどうすんすかこれ、やばいっすよ超やばい」

「あ、あの男に、し、しつこく、あの、追いかけられて、た、たすけて、たすけてください」

「お前が逃げるからだろうが。お前のせいで俺の足裏は傷だらけだ。ほら、見てみろ」

「やばい、やばい、めちゃくちゃやばい奴じゃないっすか。こんなやばい奴俺初めて見たっすよ」