「とにかく何が何でも紹介しますんで、楽しみにしていてほしいっす。画像で見るより実物の方がそれはもう超可愛いんで。先輩のことだから大丈夫だって信じてますけど、絶対に惚れたらダメっすよ。マジで」

 惚気る後輩の話に耳を傾けることもなく聞き流していると、久々に客が来店した。切り替えの早い後輩が、いらっしゃいませ、と我先に発するが、その言葉尻が不自然に萎む。彼はそもそも口を開けなかった。そうなるのも無理はない。来店してきた若い女性客はなぜか顔面蒼白で、息は酷く切れており、恐怖に怯えた様子でしきりに背後を気にしていたのだ。明らかに様子がおかしかった。

 女性客はレジにいる男二人を認めると、あの、あの、と必死に何かを伝えようと声を上げた。しかし、パニックに陥っているのか全く要領を得ない。女性を見るにただならぬ雰囲気であることは確かだが、それくらいしかまだこちらには情報がなく、何を訴えているのか彼にも後輩にも分からなかった。

「ど、どうしたんすか? え、え、な、何事? 何事っすかこれ」

「あの、あの、あれ、あれが、あの、あれ、あの、お、おとこが、あの」

「あれ? おとこ? お、おとこって、男? ど、どういうことっすか?」

「ど、どういうこと、どういうこと、え、えと、あの、お、おとこが、おとこが」

「ちょっと落ち着いてくれませんか。そっちは一緒にパニックになってどうするんですか」

 混乱している女性に引っ張られ後輩まで動揺していた。これでは何も分からない。話も進まない。パニックになっている人間にパニックで返したところで逆効果である。