「そうだ、今度先輩に、さっき見せた彼女のことを紹介してもいいっすか?」
「しなくていいです」
食い気味に即答する。スマホをポケットにしまった後輩が、妙案を思いついたとばかりに手を打ったが、彼は一秒たりとも考えずにその案を清々しいほど即座に切り捨てたのだった。
「そんなこと言わないでくださいよ。俺たちの仲じゃないっすか」
「そんな仲になった覚えはありませんが」
「そりゃないっすよ先輩」
そりゃないのは後輩である。後輩の彼女を紹介されるような親密な関係になった覚えはない。
後輩からは未だ懲りずに連絡先を聞かれることがあるが、ずっと断り続けていた。彼は自分に繋がる手段となり得るものを死守し続けているのだ。心を開かれていないと思うのが普通ではないのか。
どんなに冷たく遇っても人懐っこい犬のように尻尾を振って駆け寄ってくる後輩は、いくらなんでもポジティブがすぎる。疲れてしまう。
「俺はどうしても先輩に彼女を紹介したいんで、そのうち連れて来るっす。先輩の都合とかも知りたいんで、連絡先を教えてくれないっすか?」
「教えません」
「マジっすか? まだ教えてくれないんすか? いつになったら教えてくれるんすか?」
「教える気はありません」
「そんなぁ、マジ辛いっすよ先輩」
不覚にも、それは二人の中で定番のやりとりになっていた。連絡先を聞かれても断るのが当たり前で、連絡先を聞いても断られるのが当たり前。
後輩は百発百中でぶった斬られているのに、しぶとく足を掴んでくる。いつになったら諦めてくれるのか。最早こちらが、諦めてくれることを諦めかけているところまで来ていた。それでも折れるつもりはない。連絡先は絶対に教えない。一瞬の気の迷いが命取りとなるのだ。押しに負けて教えたら後悔する。一度でも使用したら人生が狂う薬物と同じである。
「しなくていいです」
食い気味に即答する。スマホをポケットにしまった後輩が、妙案を思いついたとばかりに手を打ったが、彼は一秒たりとも考えずにその案を清々しいほど即座に切り捨てたのだった。
「そんなこと言わないでくださいよ。俺たちの仲じゃないっすか」
「そんな仲になった覚えはありませんが」
「そりゃないっすよ先輩」
そりゃないのは後輩である。後輩の彼女を紹介されるような親密な関係になった覚えはない。
後輩からは未だ懲りずに連絡先を聞かれることがあるが、ずっと断り続けていた。彼は自分に繋がる手段となり得るものを死守し続けているのだ。心を開かれていないと思うのが普通ではないのか。
どんなに冷たく遇っても人懐っこい犬のように尻尾を振って駆け寄ってくる後輩は、いくらなんでもポジティブがすぎる。疲れてしまう。
「俺はどうしても先輩に彼女を紹介したいんで、そのうち連れて来るっす。先輩の都合とかも知りたいんで、連絡先を教えてくれないっすか?」
「教えません」
「マジっすか? まだ教えてくれないんすか? いつになったら教えてくれるんすか?」
「教える気はありません」
「そんなぁ、マジ辛いっすよ先輩」
不覚にも、それは二人の中で定番のやりとりになっていた。連絡先を聞かれても断るのが当たり前で、連絡先を聞いても断られるのが当たり前。
後輩は百発百中でぶった斬られているのに、しぶとく足を掴んでくる。いつになったら諦めてくれるのか。最早こちらが、諦めてくれることを諦めかけているところまで来ていた。それでも折れるつもりはない。連絡先は絶対に教えない。一瞬の気の迷いが命取りとなるのだ。押しに負けて教えたら後悔する。一度でも使用したら人生が狂う薬物と同じである。



