殺し終わったはずなのに、別の作業に取りかかる彼を見て不安げな声を漏らす女子に、彼は顔も見ずに平坦な調子で告げた。いつもはその時を待つ側だが、今は待たせている側である。父親が絡むような真似をしていなければ、女子は無駄でしかない長話をせずに秒で殺させてくれたかもしれない。殺しに来ました。今すぐ殺してください。はい殺しました。終了。

 彼は無言で手を動かし続け、女子は無言で待ち続けた。異様な時間が流れている。普通であればパニックになっていてもおかしくない状況だが、自分の死と父親の死を切望したのは女子本人である。混乱して騒いだり逃げたりせずじっとしていることからも、揺るぎない覚悟が垣間見えた。

 絶望は、人を死へと導く。あと一歩踏み出せずにいる死にたがりの背中を、彼は迷いなく押している。本人のために、というよりも、彼自身が快楽を得るために。

 死体を甚振る彼は、父親の陰部を半ば引きちぎるようにして切断した。手袋越しであっても他人のものを触るのは不愉快だったが、致し方ない。しっかり殺しておかなければ気が済まないのだ。

 切り離したものを、彼は父親の血塗れの口内に無理やり押し込んで片付けた。口が裂けていることもあり、収まり切らない分はそこから少し飛び出しているが、自分のものを頬張って食べているように見えなくもない。滑稽である。自業自得である。

「お待たせしました。どんな風に殺されたいか、考えましたか」

 足元の死体に瞬く間に興味を失くした彼は、女子を振り返りようやく本題に入った。女子は暫し黙り込み、それから、決意を固めた様子で彼を見上げた。

「ずっと苦しんできました。学校でも、家でも。だから、死ぬ時くらい、苦しまずに死にたいです」

「分かりました。後悔はないですか」

「あるわけないです。あったら裸であることを全力で恥じています。サディスティックに人を殺すあなたを前にして怯えています」