寝ている女のためにリビングの電気を消し、玄関ではなく、勝手口の方から家を出た。
静かな外の空気を吸う。ゴールデンタイムを過ぎ、深夜に差し掛かろうかという時間帯。辺りに人気はなかった。元より、ここは都会とまではいかない地域であるため、夜はちゃんと眠ってくれるのだ。
広くはない駐車スペースに停めていた黒い車に乗り込み、エンジンをかける。そこでようやく手袋を外してナビを設定し、車内で無駄な時間を過ごすことなく、すぐに県外に位置する自宅を目指して車を発進させた。何度目かの一人ドライブの幕開けである。
ナビの指示に従ってハンドルを操作しながら、彼は今日の殺しについて振り返った。
殺害時間を多少長く取ったものの、それでも数十分程度である。実際の滞在時間は一時間半くらいで、そのほとんどが殺す対象の長話に費やされている。元は取りたいが、興味のない話を聞いて時間が過ぎるのは好まなかった。相手の話を遮断して殺しに取り掛かってしまえばいいのかもしれないが、それでは改めての合意を得られなくなる可能性がある。合意があるかないかは重要なのだ。
話したがったら話させるしかないのだろうか。中には無駄話などはせず、すんなり殺させてくれる人もいたが、全員が全員そうではないのだから悩みどころである。
彼はあれこれ逡巡するが、結局は、気持ちよく相手を殺すためにも、気持ちよく相手が殺されるためにも、少しの妥協は必要かもしれない、という結論に至った。面と向かって、殺してほしい、とお願いされるまでは好きに喋らせるのが、やはり賢明なのかもしれない。
次に殺る人は、話をあまりしない人、しても短い人であればいいのに、と彼は思う。その方が、ストレスは軽減する。睡魔に襲われることもない。
彼は既に次の殺人に対して想像を膨らませながら、寄り道はすることなく、自宅へ向かってまっすぐ車を走らせた。
静かな外の空気を吸う。ゴールデンタイムを過ぎ、深夜に差し掛かろうかという時間帯。辺りに人気はなかった。元より、ここは都会とまではいかない地域であるため、夜はちゃんと眠ってくれるのだ。
広くはない駐車スペースに停めていた黒い車に乗り込み、エンジンをかける。そこでようやく手袋を外してナビを設定し、車内で無駄な時間を過ごすことなく、すぐに県外に位置する自宅を目指して車を発進させた。何度目かの一人ドライブの幕開けである。
ナビの指示に従ってハンドルを操作しながら、彼は今日の殺しについて振り返った。
殺害時間を多少長く取ったものの、それでも数十分程度である。実際の滞在時間は一時間半くらいで、そのほとんどが殺す対象の長話に費やされている。元は取りたいが、興味のない話を聞いて時間が過ぎるのは好まなかった。相手の話を遮断して殺しに取り掛かってしまえばいいのかもしれないが、それでは改めての合意を得られなくなる可能性がある。合意があるかないかは重要なのだ。
話したがったら話させるしかないのだろうか。中には無駄話などはせず、すんなり殺させてくれる人もいたが、全員が全員そうではないのだから悩みどころである。
彼はあれこれ逡巡するが、結局は、気持ちよく相手を殺すためにも、気持ちよく相手が殺されるためにも、少しの妥協は必要かもしれない、という結論に至った。面と向かって、殺してほしい、とお願いされるまでは好きに喋らせるのが、やはり賢明なのかもしれない。
次に殺る人は、話をあまりしない人、しても短い人であればいいのに、と彼は思う。その方が、ストレスは軽減する。睡魔に襲われることもない。
彼は既に次の殺人に対して想像を膨らませながら、寄り道はすることなく、自宅へ向かってまっすぐ車を走らせた。



