「最近の学生は何がしたいのか分かりませんね」

「単純に構ってほしかっただけだと思います」

「だとしたら迷惑すぎますね」

 カナデは口を閉じ、もぐもぐと咀嚼する。彼はまたしてもカナデの水を飲んでしまいそうになったが、思い止まり、口をつけることなくカナデの側にコップを戻した。

「何なの? ふざけやがって。死ね」

「本当にマジで腹立つ。死ねよ」

 女子が揃って暴言を吐き、イライラを隠しもせずにその場を立ち去った。肝が据わっている彼とカナデはノーリアクションで、顔すら上げない。死ねと言われても、少しも傷はつかなかった。負け犬の遠吠えにしか聞こえなかったのだ。

 学生に誘われ冷静に追い払った後であっても、二人はその場に居座り続けた。気まずさを感じることもなくちゃっかりデザートまで注文し、食べ終え、ファミレスを後にする。

 ナンパに大失敗した女子二人を含む学生の集団は、一足先に姿を消していた。