「申し訳ないですが、お断りします。俺、彼女いますし、彼にもいるんですよ。それに、君たちまだ学生みたいですから。下手に関わるといろいろ問題があります。何より、年下に興味はないです。迷惑でしかありません。君たちと違って大人であるこちらの立場も理解していただけますか?」

 興味はないだとか迷惑だとか、ストレートな言葉を放ちつつも、最後には理解してもらえないかと眉尻を下げて困ったような顔を浮かべるカナデ。傷つけないようにしながら、それでいて分かりやすくはっきりと断ってみせるカナデの話術は見事である。一点自分に関する嘘が気になるが、相手をしてくれている以上文句は言うまい。ここで否定するのもおかしな話である。

 女子たちは返事を探るように数秒押し黙り、それから、上手くいかなかったことに沸々とした怒りが湧き上がってきたのか、苛立ったように感情的になった。

「はぁ? 何それ、だる」

「せっかくこっちが声かけてやったのに」

 ナンパを断られたことで、プライドを傷つけられてしまったようだ。女子たちの口調が攻撃的なものとなり、態度も視線も物がひっくり返ったように豹変した。しかし、彼もカナデも冷静だった。

 彼は手を動かして、静かに料理を食べ続ける。カナデの外面は困った表情のままである。怠いのはこちらであった。

「男二人で食事とかホモじゃん。彼女いるとか嘘でしょ」

「そっちの人なんかずっと喋んないし。どう見ても陰キャ、童貞」

「抱かせてやってもいいかなって思ったのに、間違いだった。顔だけのクソじゃん」

 してやったのに。させてやってもよかったのに。先程から何様のつもりだ。クソガキあばずれ痴女共が。

 彼は真顔を保ったまま、心の中で暴言を炸裂させる。そうしながら、女子たちの喉を掻っ捌いていた。無様に死ねばいい。