黙々と料理を口に運び胃を満たしていると、ふとカナデの視線が席を外れたことに気づいた。何かあるのだろうかとその視線の先を追うよりも前に、ミコトさん、とカナデが考案した名を呼ばれる。
「ミコトさんから見て右斜め後ろの方の席にいる学生グループ、特に女子が、こちらをちらちらと窺っています」
カナデはさらりと言ってから、料理を口に運んだ。カナデは一瞬だけ学生グループの方に目を遣ったものの、気づいていないふりをしている。彼は振り返ろうとしたが、思い直し、カナデに合わせることにした。食べ物を放り込み、噛み砕き、飲み込む。
「カナデさんについて、何か気になることでもあるのかもしれませんね」
「俺ではなく、ミコトさんじゃないですか? ミコトさんは独特な雰囲気がありますから」
「それはカナデさんの方だと思いますが」
恋愛感情を利用する詐欺師なだけあって、カナデは異性の心を鷲掴みにしそうな容姿をしている。胡散臭さはあれど、標的の前ではその人物をコントロールしやすいキャラを演じているはずだ。人を騙すための仮面をいくつも持っているだろうが、今はそれを被っていないであろうほぼ素の詐欺師に、オーラがないとは言い難い。
「女子二人が席を立ちました。手に何か持ってます」
「実況しなくていいです」
「こちらに向かってきてます。どうしますか?」
「相手はカナデさんがしてください。俺は何も言いません」
「人任せですね」
コミュニケーション能力はカナデの方がある。学生たちが何を企んでいるのか知らないが、できるだけ未成年の相手はしたくない。関わらないのが一番いい。
彼は学生グループを一切振り返らずに、注文した料理を食べ続けた。何か話しかけられた場合、カナデが上手く遇ってくれるはずだ。
「ミコトさんから見て右斜め後ろの方の席にいる学生グループ、特に女子が、こちらをちらちらと窺っています」
カナデはさらりと言ってから、料理を口に運んだ。カナデは一瞬だけ学生グループの方に目を遣ったものの、気づいていないふりをしている。彼は振り返ろうとしたが、思い直し、カナデに合わせることにした。食べ物を放り込み、噛み砕き、飲み込む。
「カナデさんについて、何か気になることでもあるのかもしれませんね」
「俺ではなく、ミコトさんじゃないですか? ミコトさんは独特な雰囲気がありますから」
「それはカナデさんの方だと思いますが」
恋愛感情を利用する詐欺師なだけあって、カナデは異性の心を鷲掴みにしそうな容姿をしている。胡散臭さはあれど、標的の前ではその人物をコントロールしやすいキャラを演じているはずだ。人を騙すための仮面をいくつも持っているだろうが、今はそれを被っていないであろうほぼ素の詐欺師に、オーラがないとは言い難い。
「女子二人が席を立ちました。手に何か持ってます」
「実況しなくていいです」
「こちらに向かってきてます。どうしますか?」
「相手はカナデさんがしてください。俺は何も言いません」
「人任せですね」
コミュニケーション能力はカナデの方がある。学生たちが何を企んでいるのか知らないが、できるだけ未成年の相手はしたくない。関わらないのが一番いい。
彼は学生グループを一切振り返らずに、注文した料理を食べ続けた。何か話しかけられた場合、カナデが上手く遇ってくれるはずだ。



