素直に話した彼は警察との電話を切り、その手で今度は店長にかけた。コールが続く。日付が変わった深夜である。もう寝ているだろうか。

 緊急であるため、少し長めに鳴らしたが、出ない。一度切るかと耳から電話を離しかけると、プツと呼出音が途切れた。耳に再度押し当てる。

『もしもし? どうしたの? 何かあった?』

 夜も遅い。こんな時間に直接電話をかけてくるなどよっぽどのことがあったに違いないと察しているような、緊張感のある店長の声だった。いつもは穏やかな人だが、それでも店長になれた人なのだから、いざという時はしっかり部下を導いてくれる。

「遅くに申し訳ないです」

『それは大丈夫。用件は?』

「先程、強盗に遭いました。犯人はレジの現金を奪って逃走しています。警察には通報済みです」

『強盗? 怪我はしてない?』

「二人とも負傷していますが、警察にかけた際に救急車を呼んでもらいましたので、今は到着を待っている状況です」

 外の様子を窺い、耳を澄ます。まだサイレンの音は聞こえない。

『分かった。僕もすぐにそっちに行くから。警察や救急の方が先に来られたらその指示に従って。連絡ありがとう』

 電話を切り、子機を元の位置に戻す。血が付着している。事が済んだら拭き取ろうと思いながら、彼は後輩を振り返った。その場をじっと動かず、鼻を押さえて安静にしている姿を捉える。血を吸ったティッシュが後輩の手元に溜まっていた。

「警察と救急車と、あと店長も来てくれます」

 後輩に伝えると、後輩は徐に顔を上げた。静かに見つめられる。その双眸からは混乱は見て取れず、真っ青だった顔色も大分良くなっていた。呼吸も落ち着いている。何やら発言しそうな雰囲気すらある。後輩の目が、物を言っていた。