彼は歩みを進め、顔面蒼白になっている後輩の前を通り過ぎながら、さりげなく口にする。
「鼻血の時は上を向かない方がいいです」
舌が動かしにくかった。殴られ盛大に噛んでしまったせいだろう。鉄の味も続いている。口内の傷は長引いてしまいそうだった。
後輩に助言した彼は一旦バックヤードへ行き、社員で共有しているティッシュ箱を手にして店内へ戻った。上げていた顎を下げている素直な後輩に、持ってきたティッシュ箱を丸ごと渡す。
業務のように淡々と、やるべきことを一つ一つ消化していく彼は、自身の止血は程々にして電話をかけることにした。レジに置いてある子機を手に取り、血がつくのも構わず、三桁の番号を押して警察を呼ぶ。事情を話せば救急車も呼んでくれるだろうか。まだ少し酔っているような気分の悪さが残っているものの、ふらつくことなく歩けてはいる自分はともかく、立ち上がれもせず、止血も間に合っていない後輩は診てもらった方がいいだろう。
『はい、警察です。事件ですか? 事故ですか?』
すぐに応答した警察官に、彼は依然として冷静な調子で緊急案件を述べた。
「事件です。コンビニで強盗に遭いました。犯人は四人組で、レジの現金を奪って逃走中です。暴行も加えられ、自分ともう一人が負傷しています」
喋っている途中で血が絡んだ。時折咳き込んでしまいながらも掻い摘んで説明し、警察から尋ねられたことにも答えていく。最終的には、要請してくれた救急車と共に現場に急行してもらうことになった。その過程で、自分の名前や電話番号などの個人情報を尋ねられ思わず渋ってしまいそうになったが、こればかりはやむを得ない。やましいことがあるのかと猜疑の目を向けられてしまうくらいなら、潔く答えてしまった方がいい。
「鼻血の時は上を向かない方がいいです」
舌が動かしにくかった。殴られ盛大に噛んでしまったせいだろう。鉄の味も続いている。口内の傷は長引いてしまいそうだった。
後輩に助言した彼は一旦バックヤードへ行き、社員で共有しているティッシュ箱を手にして店内へ戻った。上げていた顎を下げている素直な後輩に、持ってきたティッシュ箱を丸ごと渡す。
業務のように淡々と、やるべきことを一つ一つ消化していく彼は、自身の止血は程々にして電話をかけることにした。レジに置いてある子機を手に取り、血がつくのも構わず、三桁の番号を押して警察を呼ぶ。事情を話せば救急車も呼んでくれるだろうか。まだ少し酔っているような気分の悪さが残っているものの、ふらつくことなく歩けてはいる自分はともかく、立ち上がれもせず、止血も間に合っていない後輩は診てもらった方がいいだろう。
『はい、警察です。事件ですか? 事故ですか?』
すぐに応答した警察官に、彼は依然として冷静な調子で緊急案件を述べた。
「事件です。コンビニで強盗に遭いました。犯人は四人組で、レジの現金を奪って逃走中です。暴行も加えられ、自分ともう一人が負傷しています」
喋っている途中で血が絡んだ。時折咳き込んでしまいながらも掻い摘んで説明し、警察から尋ねられたことにも答えていく。最終的には、要請してくれた救急車と共に現場に急行してもらうことになった。その過程で、自分の名前や電話番号などの個人情報を尋ねられ思わず渋ってしまいそうになったが、こればかりはやむを得ない。やましいことがあるのかと猜疑の目を向けられてしまうくらいなら、潔く答えてしまった方がいい。



