真顔のまま心中で暴言を吐きまくる彼の前で、後輩は深夜テンションの如くへらへらと笑っている。何がそんなに楽しくて面白いのか、彼には微塵も想像できない。

「俺、先輩ともっと仲良くなりたいんすけど、連絡先とか教えてくれないっすか?」

 男にナンパをされているような気分だった。いくら冷たく雑に遇っても、後輩の機嫌は悪くなるどころか良くなっているような気さえする。自分から距離を置こうともしない。後輩の周りに自分のような人種はいないのか、物珍しがるように面白い人だと思われてしまっているのは嫌な傾向だ。

 彼は後輩と仲良くなるつもりはなかった。仕事以外でもこのような絡みをされるのは堪えられそうにない。よって、連絡先は教えない。

「教えません」

 悩む素振りも見せずに切り捨てて、場所を移動する。彼の手の届く範囲にあった商品は、もう整理のしようがないほどに綺麗に陳列されていた。

「マジっすか? 教えてくれないんすか? そりゃないっすよ」

 嘆く後輩を無視して、彼は別のコーナーの整理を始める。

 したくもない馴れ合いはしない。積極的に来られてたじろぎ、嫌なのに断れずに何でも教えてしまうような控えめでお人好しな人間とは違うのだった。

 これだけ拒絶を示せば、流石の後輩も関わろうとするのを諦めてくれるかと思ったが、残念ながらすかすかすねすねといった語尾は離れない。彼は治安悪く舌を鳴らしてしまいそうになった。一体どういうメンタルをしているのか。

「ちょっと壁が分厚すぎじゃないっすか? 全然心開いてくれる気がしないっすね。あ、お客さん来たっす。いらっしゃいま……、ん? あれ? なんか、物凄い勢いでこっち来てんすけど、え、やば、やば、先輩やばいっす、やばいっす、先輩、うわ、うわ」