「俺にそんな人はいません」

「マジっすか。じゃあ今フリーなんすね」

「そうですね」

「実は俺もフリーなんすよ。彼女ほしくないっすか?」

「俺は別にほしくないです」

 見栄でも何でもなく、本当にほしくなかった。必要なかった。いらなかった。恋愛にすら興味が湧かないのだから、彼女がほしいほしくない以前の問題である。故に後輩の言葉も、例の自殺志願者の言葉と同様でほとんど頭に入っていなかった。耳から耳へとするすると抜けている。後輩の恋愛事情にも全く持って興味はない。

「珍しいっすね。男だったら女といろいろしたくないっすか? 俺は早く彼女作って甘やかしてやりたいんすよね。ベッドの上で」

 作業をしながら、後輩を一瞥する。何を想像しているのか、顔が情けなく緩んでいる。

 エロガキが。自分の股間でも甘やかしてろ。

 咄嗟に湧いた暴言を身体の内側に隠しつつ彼は思う。前回殺したデブの男も性欲に塗れていた。この後輩も性欲がたっぷりあるようだ。それが男として普通なのか。殺人をすることでしか発散できないのが異常なのか。

 淫らに腰を振って射精する行為よりも、暴力を振るって息の根を止める行為の方が遥かに気持ちいい。その気持ちよさを知らない方が、その気持ちよさが分からない方がおかしい。殺人欲求がある彼からすれば、そのような感覚だった。

「そうですか。それは頑張ってください」

「先輩マジずっと感情こもってなさすぎっす。面白いっすね」

 後輩マジずっと迷惑すぎっす。殺していいっすか。どうっすか。いいっすよね。

 馬鹿にするように後輩の口調に合わせてみれば、自分の知能レベルが一気にダウンしてしまったように思えた。これは本当に馬鹿丸出しの口調だ。鼻で笑ってしまいそうになる。恥ずかしくないのか。