暫し無言で踏み続けていたが、この程度で死ぬことはない。彼はまだ本気を出していないのだ。遊んでいると言っていい。
快いと感じる時間は長ければ長いほどいいのだった。自分語りをされ散々待たされたのだから、これくらいはしてもいいはずだ。
苦しげに呻きつつも死を覚悟している女の傍らで、とりあえず、という気持ちで足蹴にしていた彼は膝を曲げた。女をじっと凝視する。殺されることを望んだ自分の言動を後悔しているだろうかと思ったが、女は彼から逃げようとはしなかった。女の顔は虚ろで、全てを諦めたかのように生気が感じられない。
この女の意思は強固である。そうでなければ、死ぬ手助けをすると名乗り出た、如何にも怪しい人間と会う約束を取りつけ、殺してほしいと頭を下げてまでお願いするはずがないだろう。どんなに弄んでも、最終的にはしっかり息の根を止めてやらなければ恨まれる。
彼は、なんとなく、女の細い首に手をかけた。手袋を身につけているため、そこに指紋は残らない。
布越しに感じる体温は、女が生きていることを知らせる。しかし、このまま絞め続ければ、いずれ女は死ぬ。それを女も望んでいる。
彼は女を見下ろし続ける。全体的に力が抜けている。手持ち無沙汰な両手は、申し訳程度に彼の腕に添えられている。
少しだけ、力を込めた。すると、女の手にも、僅かながら力が入った。息苦しさを堪えるための行動だろうか。
殺すことに興奮していながらも、彼はポーカーフェイスを保ったまま喉を押し潰すように首を絞めた。女の口から呻き声が漏れる。苦痛から逃れようと抵抗するというよりも、与えられる苦痛そのものを必死に堪えるような様は滑稽に見えた。
暇を持て余している空いた片手で、彼は女の髪を鷲掴んだ。頭を浮かせ、床に叩きつける。カーペットが敷いてあるため、衝撃は柔らいでしまうかもしれないが、効果がないことはないだろう。
快いと感じる時間は長ければ長いほどいいのだった。自分語りをされ散々待たされたのだから、これくらいはしてもいいはずだ。
苦しげに呻きつつも死を覚悟している女の傍らで、とりあえず、という気持ちで足蹴にしていた彼は膝を曲げた。女をじっと凝視する。殺されることを望んだ自分の言動を後悔しているだろうかと思ったが、女は彼から逃げようとはしなかった。女の顔は虚ろで、全てを諦めたかのように生気が感じられない。
この女の意思は強固である。そうでなければ、死ぬ手助けをすると名乗り出た、如何にも怪しい人間と会う約束を取りつけ、殺してほしいと頭を下げてまでお願いするはずがないだろう。どんなに弄んでも、最終的にはしっかり息の根を止めてやらなければ恨まれる。
彼は、なんとなく、女の細い首に手をかけた。手袋を身につけているため、そこに指紋は残らない。
布越しに感じる体温は、女が生きていることを知らせる。しかし、このまま絞め続ければ、いずれ女は死ぬ。それを女も望んでいる。
彼は女を見下ろし続ける。全体的に力が抜けている。手持ち無沙汰な両手は、申し訳程度に彼の腕に添えられている。
少しだけ、力を込めた。すると、女の手にも、僅かながら力が入った。息苦しさを堪えるための行動だろうか。
殺すことに興奮していながらも、彼はポーカーフェイスを保ったまま喉を押し潰すように首を絞めた。女の口から呻き声が漏れる。苦痛から逃れようと抵抗するというよりも、与えられる苦痛そのものを必死に堪えるような様は滑稽に見えた。
暇を持て余している空いた片手で、彼は女の髪を鷲掴んだ。頭を浮かせ、床に叩きつける。カーペットが敷いてあるため、衝撃は柔らいでしまうかもしれないが、効果がないことはないだろう。



