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 俺とバディのようなものになったからといって、ミコトさんの私生活を変える必要は全くありません。ミコトさんはミコトさんの生活を送ってください。従来通り人を殺す殺さないもミコトさんの自由です。俺はミコトさんの殺人のスキルを貸してほしいだけなので、金蔓を処分する時が来たら連絡するようにしますね。俺との記憶が薄れた頃になるかもしれませんが、気長に待っていてくださるとありがたいです。

【ミコトさん、今度俺と休日が被ったらどこかで食事でもしませんか?】

 カナデが時折連絡を寄越してくる限り、記憶が薄れることはなさそうだと彼は思った。

 カナデと初対面した日の別れ際、特に私生活を変える必要はないと言われ、後に続けられた弁からも、業務連絡以外はしないようだと彼は踏んでいた。だが、蓋を開けてみれば想像と違っている。記憶が薄れた頃という話は、それくらい時間がかかるという比喩に過ぎないのかもしれない。

 カナデは詐欺師である。言わずと知れたことだが、その詐欺にも種類があった。オレオレ詐欺、架空料金請求詐欺、還付金詐欺、融資保証金詐欺など、誰もが知っているようなものからあまり知られていないようなものまで、その数は多岐に渡る。金を騙し取る手口は様々で、件のカナデは人の好意を利用して金を奪う恋愛詐欺を働いているのだった。

 ターゲットを選び、あの手この手で好意を抱かせることから始め、最終的には大金を出させるほどに信用させる。金銭を搾り取った後は、容赦なく切り捨て姿を消す。相手が騙されていたと気づいた時には連絡が取れなくなっている。言葉にすると簡単そうに聞こえるが、一日二日で成し遂げられることではない。恋人関係になってからが本番のようなものであるため、すぐには結果が出にくい長期戦の詐欺であった。だからこそ、気長に待っていてほしいと言ったのだろう。