「殺された、と知った時は正直驚きました。最近まで金蔓にしていた人でしたから。でもそこで俺は閃いたんです。搾り取れるまで搾り取ったら殺す手もあるのかって。ミコトさんのおかげですよ」

「俺は通りすがりに、カナデさんの出した残滓を処分しただけですが」

「その残滓がまた新たにできたら、あの金蔓にしたみたいに、ミコトさんの手で処理してくれませんか?」

「処理できるのは胸が躍りますが、カナデさんが自らそうしようとは思わないんですか」

「中身を綺麗にすることはできます。でも本体を丸ごと廃棄することはどうもできそうにないのです」

 金蔓。残滓。処分。処理。廃棄。ここに来て言葉を暈してはいるが、治安の悪さは隠し切れていない会話だった。

 下手に突っ込みすぎずに話を続けた限りでは、彼の見解は外れてはいなかった。カナデが詐欺を働いて内側を綺麗にした後、彼が殺人を働いて外側を綺麗にする。それぞれが得意分野の役割を担い、一人の人間の精神と肉体を順に破壊することをカナデは提案しているのだ。

 人を殺せるのなら、彼にとっては悪い取引ではない。だが、人を欺いて金を奪うことが目的であるカナデの視点から考えてみると、金銭を搾り取った後に、わざわざ危険を犯してまで金蔓だった人を殺す必要はないのではないかと彼は思う。カナデが自分と手を組むことで得られるメリットは何なのか。本人の口から聞くしかない。

「人に頼んでまで、騙した相手を殺ろうとするのはなぜですか」

 カナデと視線を合わせ、追及する。まだ、了承はしない。疑問を抱いた状態ではとことんまで趣味を堪能できない。胸にあるしこりは全て取り除いてしまいたかった。

 飄々としているカナデは彼の問いに即答はせず、至って冷静な調子で、且つペースを崩すことなくのんびりとコーヒーを挟んだ。もう一度口を温めるためでもあるだろうが、湯気はもうほとんど上がっていない。