「対してミコトさんは殺人鬼。俺の予想では、連続がつく殺人鬼。間違いないですか?」

 思考が読めない瞳で見つめられる。しかし発言そのものには自信が漲っているように感じた。間違っていない。間違っているわけがない。カナデは殺人鬼本人である彼から、ゴーサインを貰うために確認しているだけだ。

 カナデが詐欺師だとは、実際にそう言われるまで彼は知らないままだっただろう。しかしカナデは違う。カナデは彼の正体を知っている。残念ながら今回は失敗したものの、それでも自殺志願者を殺害しようとして彼はここに訪れたのだ。殺すために足を運んだという事実がある時点で、誤魔化しは通用しない。寧ろそうする方が不自然極まりない。殺人鬼であるかどうかの確認の会話など、今この場では重要だとは思えない。もっと大事なことがある。

「間違いはありませんが、それがどう転んでどう着地すれば、俺と手を組むという発想になるんですか」

 詐欺師と殺人鬼。犯罪の種類は異なるものの、世間からは確実に忌避される存在同士で何を協力し合うのか、少しも予想できないわけではない。カナデが働かせているのは悪知恵だ。

「簡単に説明します。間違っていたら訂正してください」

 カナデはそう前置いてから続けた。

「ミコトさんはこの県内で女性を一人殺してますよね? 長髪で、三十代くらいの、死にたがっていたという女性です」

「よく知っていますね。県内のニュースで報道されたんですか」

「ちょこっとだけですが」

 人差し指と親指で、豆粒を摘むような仕草をするカナデ。少しだけでもテレビで流れたのなら、女がどのような経緯で、またどのような方法で殺害されたのかも知っているだろう。