こういう時は、そんなことないですよ、と励ますようなありきたりな言葉でフォローするのが正解なのかもしれないが、感情を込めて言える気もなく、そもそも殺害に関係のない余計な会話をする気もないため、彼は口を閉ざしたままでいることを選んだ。
つまらない。退屈だ。興味のない講義を機械的に聞いている時みたいな感覚だ。早く殺されたくないのか。こっちは早く殺したくてたまらない。
金を奪って満足する詐欺師と違って、彼は命を奪って満足するただの殺人鬼なのだった。それも、対象に了承を得ている珍しいタイプの殺人鬼である。
「生活がギリギリになることを理解していながら貸すなんて、当時の私はどうかしていました。恋愛感情を利用されて騙されて、もう誰のことも信じられません。もう私には何もないんです。独りぼっちなんです。働く気力も失くなりました。死にたいです。これくらいのことで死にたいなんて言うなって笑うかもしれませんが、もう無理なんです。凄く、凄く、死にたいんです。でも自分で死ぬことはできなくて、だから、死ぬのを手伝うと声をかけてくれたあなたにお願いすることにしました。殺してください。よろしくお願いします」
女が彼を一瞥し、頭を下げた。ようやく出番である。彼は気持ちが昂るのを感じた。
死ぬ手伝いをする日には常に身につけている黒い手袋に目を遣る。指紋を残さないためのものだ。
殺してもいいと相手から許可を得ていても、残念ながら法律はそれを許してくれない。逮捕されてしまうと人を殺せなくなってしまうため、指紋を残さないことはせめてもの抵抗だった。
「何か希望はありますか」
彼は女の話には一言もコメントせずにそう切り出し、女の様子を窺った。顔を上げた女が小首を傾げる。
つまらない。退屈だ。興味のない講義を機械的に聞いている時みたいな感覚だ。早く殺されたくないのか。こっちは早く殺したくてたまらない。
金を奪って満足する詐欺師と違って、彼は命を奪って満足するただの殺人鬼なのだった。それも、対象に了承を得ている珍しいタイプの殺人鬼である。
「生活がギリギリになることを理解していながら貸すなんて、当時の私はどうかしていました。恋愛感情を利用されて騙されて、もう誰のことも信じられません。もう私には何もないんです。独りぼっちなんです。働く気力も失くなりました。死にたいです。これくらいのことで死にたいなんて言うなって笑うかもしれませんが、もう無理なんです。凄く、凄く、死にたいんです。でも自分で死ぬことはできなくて、だから、死ぬのを手伝うと声をかけてくれたあなたにお願いすることにしました。殺してください。よろしくお願いします」
女が彼を一瞥し、頭を下げた。ようやく出番である。彼は気持ちが昂るのを感じた。
死ぬ手伝いをする日には常に身につけている黒い手袋に目を遣る。指紋を残さないためのものだ。
殺してもいいと相手から許可を得ていても、残念ながら法律はそれを許してくれない。逮捕されてしまうと人を殺せなくなってしまうため、指紋を残さないことはせめてもの抵抗だった。
「何か希望はありますか」
彼は女の話には一言もコメントせずにそう切り出し、女の様子を窺った。顔を上げた女が小首を傾げる。



