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 夜から朝にかけてのコンビニの仕事を終え、そこで弁当とお茶を購入してから帰宅する。朝食である。

 彼は自炊をしない男だった。料理に関しては何をするにも面倒臭いが先行し、全くやる気にならないのだ。よって、市販の弁当や、常備しているカップ麺ばかり食べている。

 何年も不摂生な生活を送っているが、今のところ病気には罹っていない。まだ二十代後半という若さがカバーしてくれているのだろう。いつまで堪え忍んでくれるだろうか。

 食にも健康にも無頓着な彼は、買った弁当を電子レンジで温めた。店でも温めることは可能だが、仕事の時間以外であまり長居はしたくない気持ちがあるため、いつも温めずに冷たいまま持ち帰っていた。

 それを続けていると、最初のうちは温めるかどうか確認してくれていた仕事仲間も、いつの日か何も聞いてこなくなっていた。元々少ない会話が更に少なくなったが、基本的に無口な彼は意に介さなかった。

 電子レンジがピーピー鳴くのを最後まで聞かずに扉を開け放ち、中の弁当を取り出す。しっかり温まっていることを手のひらで確認してから、開けた扉を閉めた。少し熱いくらいが好みで、中途半端は好きではなかった。

 温めた弁当を机の上に置き、貰った割り箸で早速口にする。テレビもつけずにもぐもぐと咀嚼し続け、ごくごくとお茶で喉を潤し、空いていた腹を満たしていく。

 何の感動もなく機械的に朝食を終えた彼は、スマホに手を伸ばした。例のアプリに通知がきている。昨夜自分が送ったメッセージに、相手が何かしらのリアクションをしてくれたのかもしれない。期待に震えそうになる指先で画面を触った。

【俺のこと、からかってますか? それとも本当に殺してくれるんですか? もし嘘を吐いているのなら、期待させるようなことを言わないでいただきたいです】