定期的に人を殺したいという欲求を覚える彼は、釣った女としっかり話し合ってから、待ち望んだこの日を迎えている。
彼が女の自宅に上がり込み、これからしようとしていることは、全て合意の上である。ビジネスのようなものである。
早く殺したい。殺してしまいたい。
しかしながら、彼の願いも虚しく、女の話はまだ続く。まだ殺せないようだ。まだ我慢するしかないようだ。
「本当に好きだったんです。彼も私のことを好きだと何度も言ってくれて。私、こんな暗い人間だから、誰かに好意を持たれるということが全くと言っていいほどありませんでした。だから余計に、その言葉が嬉しくてたまらなかったんです。彼を逃したら、もう私に恋愛なんかできないと思うくらい特別だったんです。結婚だって考えてました。彼も同じことを言ってくれました。でも、彼には多額の借金があったみたいで。それを返さないと結婚できないって言われて、君と結婚したいから、お金を貸してほしいってお願いされて、私、断れなくて。だって、私も結婚したかったから。それで、貸したんです。彼が抱えていた借金の全額を。これで結婚できるって思ったら、突然彼と一切の連絡が取れなくなって。そこでようやく、騙されてたんだってことに気づきました。本当に馬鹿ですよね」
女は自嘲する。詐欺に遭ったことを自嘲する。
あまり話を聞いてはいなかったが、どうやらこの近辺に、典型的な詐欺を働く詐欺師がいるようだ。
三十代にしては随分と老けている女は詐欺師の食べ残しであり、それを詐欺師と接点のない彼が処分しようとしている。滓しか残っていないものだ。少なくとも、金を騙し取る詐欺師にとっては。
詐欺の被害に遭い、意気消沈している女の、馬鹿ですよね、という卑屈な発言に、馬鹿ですね、とは言わなかった。相手のマイナスな言葉に頷いてしまうと後が面倒臭いのだ。
彼が女の自宅に上がり込み、これからしようとしていることは、全て合意の上である。ビジネスのようなものである。
早く殺したい。殺してしまいたい。
しかしながら、彼の願いも虚しく、女の話はまだ続く。まだ殺せないようだ。まだ我慢するしかないようだ。
「本当に好きだったんです。彼も私のことを好きだと何度も言ってくれて。私、こんな暗い人間だから、誰かに好意を持たれるということが全くと言っていいほどありませんでした。だから余計に、その言葉が嬉しくてたまらなかったんです。彼を逃したら、もう私に恋愛なんかできないと思うくらい特別だったんです。結婚だって考えてました。彼も同じことを言ってくれました。でも、彼には多額の借金があったみたいで。それを返さないと結婚できないって言われて、君と結婚したいから、お金を貸してほしいってお願いされて、私、断れなくて。だって、私も結婚したかったから。それで、貸したんです。彼が抱えていた借金の全額を。これで結婚できるって思ったら、突然彼と一切の連絡が取れなくなって。そこでようやく、騙されてたんだってことに気づきました。本当に馬鹿ですよね」
女は自嘲する。詐欺に遭ったことを自嘲する。
あまり話を聞いてはいなかったが、どうやらこの近辺に、典型的な詐欺を働く詐欺師がいるようだ。
三十代にしては随分と老けている女は詐欺師の食べ残しであり、それを詐欺師と接点のない彼が処分しようとしている。滓しか残っていないものだ。少なくとも、金を騙し取る詐欺師にとっては。
詐欺の被害に遭い、意気消沈している女の、馬鹿ですよね、という卑屈な発言に、馬鹿ですね、とは言わなかった。相手のマイナスな言葉に頷いてしまうと後が面倒臭いのだ。



