ポーカーフェイスの裏で思いながらも、彼は店長の気分を良くさせようと従順なふりをして頷いた。

 悪く思われないように本音を隠し、彼は害のない普通の人間を演じ続ける。コンビニ店員という役を演じることで、怪しまれることなくできるだけ安全に人を殺すことができるのだ。殺すことをやめるという考えは、彼にはなかった。

 店長との雑談は長くは続かず、二人してレジに居座ったまま会話のない時間が過ぎ去った。その間に来店してきた数少ない客は、彼が責任を持って捌いた。礼を口にしてくれる良質な客だった。夜に目を覚ます変質者が訪れるようなイレギュラーは起きずに済みそうである。

 今日も平穏無事に終えられそうだと踏んだその後は、大型トラックの運転手によって運び込まれてきた商品を受け取り、淡々と陳列していくいつもの作業に取りかかった。

 彼は黙々と手を動かす。商品を丁寧に扱い、丁寧に置く。店長も別の売場で同じ作業を繰り返す。彼よりもいくらか手際が良かった。ゆるゆるしていながらも、そこはやはりベテランである。埋められない年数の差があった。

 一人の客が来店する。いらっしゃいませ、の声が店長と被ったが、珍しいことではない。いちいち顔を見合わせることはしなかった。

 彼は出入り口に目を向ける。仕事の開始時間から闇に包まれていた外に色が付き始めている。その日の仕事もラストスパートであった。

 そして、彼が自殺を志願していた女を殺害してから、彼の身には何事もなく一日以上が経過していたのだった。