テレビを見ながら思う存分大量虐殺を続けていると、カサカサと何かが蠢くような耳につく雑音が割り込んだ。壁に気配を感じ、彼は目を向けた。息を潜めるように動きを止めた一匹の大きなクモがいた。
暫しの間、彼は壁に張りついたまま静止するクモと睨み合った。クモがこちらを見ているかは知らないが、彼は慌てることなく凝視した。芸能人やエキストラを殺害したように、想像上でクモもしっかり退治した。
室内に現れるクモの多くは、害虫を捕食してくれる益虫である。ムカデや蚊のように無闇に殺す必要はない。故に、彼はのんびりと構え、アイスカフェオレをまた口に含んだ。ごくりと飲み込む。飲み慣れた味が舌に広がる。流している恋愛ドラマは中盤に差し掛かっている。主演はもう何度も彼に殺されている。画面に映る度に殺されている。
手にしていたカップを机上に置くと、彼は不意に気が変わった。常備しているティッシュ箱を出し抜けに掴み取り、壁にくっついているクモに向かってぶん投げた。クモは驚いたようにカサカサと音を立てて壁の隅の方にまで移動する。飛ばしたティッシュ箱が、逃げ足の速いクモに命中することはなかった。
壁に当たってひっくり返ったティッシュ箱をそのままに、彼は再び恋愛ドラマを無表情で見つめた。全く持って、心が動かされないドラマだった。
暫しの間、彼は壁に張りついたまま静止するクモと睨み合った。クモがこちらを見ているかは知らないが、彼は慌てることなく凝視した。芸能人やエキストラを殺害したように、想像上でクモもしっかり退治した。
室内に現れるクモの多くは、害虫を捕食してくれる益虫である。ムカデや蚊のように無闇に殺す必要はない。故に、彼はのんびりと構え、アイスカフェオレをまた口に含んだ。ごくりと飲み込む。飲み慣れた味が舌に広がる。流している恋愛ドラマは中盤に差し掛かっている。主演はもう何度も彼に殺されている。画面に映る度に殺されている。
手にしていたカップを机上に置くと、彼は不意に気が変わった。常備しているティッシュ箱を出し抜けに掴み取り、壁にくっついているクモに向かってぶん投げた。クモは驚いたようにカサカサと音を立てて壁の隅の方にまで移動する。飛ばしたティッシュ箱が、逃げ足の速いクモに命中することはなかった。
壁に当たってひっくり返ったティッシュ箱をそのままに、彼は再び恋愛ドラマを無表情で見つめた。全く持って、心が動かされないドラマだった。



