後輩みたいな、尻尾を振って走り回る犬のような人間はもう一人いた。後輩の彼女、金髪ギャルである。金髪ギャルもまた、深夜のコンビニに訪れていた。刺された彼氏から先輩が助けてくれたって聞いたので、お礼を言いに来たんですけど、あ、うわ、なんか、やばい、久しぶりに見た推しがはちゃめちゃにかっこよすぎて目的を忘れそう。眩しい。輝いてる。イケメンすぎる。先輩、いろいろ、マジで、助かります。ありがとうございます。刃物持った男に立ち向かった先輩かっこよすぎ。めちゃくちゃ命の恩人じゃん。彼氏も先輩のこと命の恩人だって感謝してました。私たちの推しはやっぱり最強でしかない。息つく暇もなく一方的に喋り、嵐のように去って行った金髪ギャル。後輩や金髪ギャルの中で、彼は不覚にも恩人にレベルアップしていたようだった。

 後輩の両親や彼女など、人からどんなに感謝されようとも、彼の心は動かない。鼻高々にもならない。彼は至っていつも通りに、まるで刺傷事件など起きていないかのように、淡々と仕事をこなす日々を送っていた。そうしながら、人を刺殺する妄想を繰り広げていた。後輩の代わりにシフトに入った相方の店員も、治安の悪いと言わざるを得ない深夜に来店してきた客も、わざわざ礼を伝えにきた後輩の両親も彼女も、ひとまず全員刺し殺し、欲求をちまちまと満たした。

 ただ流しているだけのテレビを眺めながら、彼はアイスカフェオレに度々口をつける。恋愛ドラマが放送されていた。興味はなかった。何一つ惹きつけられなかった。

 喉が渇く。アイスカフェオレを飲む。頭がクリアになる。体の内側が冷えていく。また一口飲む。伏せた目を上げる。綺麗になった脳内で、映っている芸能人をぶっ殺す。鮮血が噴き出し、舞台が真っ赤に染まる。気分が良くなる。恍惚とした心境で、その他のエキストラも片っ端からぶっ殺す。舞台はあっという間に血に染まる。アイスカフェオレを飲む。殺人は快楽である。唇の内側を舐める。早くカナデの金蔓をぶっ殺したい。