一度でもイレギュラーな出来事が起きたら、またそのようなことが起こるかもしれないと懸念するのは当然のことだった。実際に二回目があった。三回目はまだないが、この場合の三度目の正直など不要である。

 これ以上治安の悪い夜のコンビニと化してしまうのは避けたい。三回も警察沙汰になってしまったら、いよいよ顔を覚えられてしまうかもしれなかった。裏で人を殺しまくっている彼にとっては、それが一番の懸念事項である。変にマークされるわけにはいかない。殺す予定の人間を殺せずに手錠をかけられるなど冗談ではない。もう人を殺せなくなるのも冗談ではない。自分はまだ、人を殺したい。彼はまだ、人を殺したいのだった。

 そのような外道じみた欲求を真顔のままふわふわと脳裏に浮かばせながら、彼はお菓子コーナーへ手をつけた。何度も人を殺した汚れたその手で、整理をするために食品を触った。しかしこれを客が購入したとて、客は気づきもしない。思いもしない。自分の身近に殺人鬼がいると誰が疑うのか。この近辺で殺人事件が起きていて、犯人が逮捕されていないのならともかく、ここで人が殺されるような血生臭い事件は起きていない。殺人鬼が潜んでいるなど、普通に生活をしているなど、誰も思わない。客の目から見れば、彼はただのコンビニ店員である。そこで働いているだけの人間である。

「いらっしゃいませ」

 客が来店した。レジにいる後輩が明るい声で出迎えている。遅れて彼も、仕事だと割り切って同じ言葉を放つ。後輩と比べるとやはり、声は低めだった。

 お菓子コーナーはレジの近くで、入ってきた客がレジに直行する姿が見えた。中年の女性であり、深夜によく煙草を買いに来る女性である。人に興味のない彼であっても、常連客の顔は嫌でも覚えてしまうのだった。女性は今日も煙草が目的だろう。

「煙草を買いに来たんですが、いつも持ってきている空箱を誤って捨ててしまって。番号言いますので、ちょっとだけ見させてください」