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 嬉々として話をしている相手が人殺しだと知ったら、一体どのようなリアクションを取るのだろう、と彼は仕事の相方である後輩を雑に扱いながら思った。

 わざわざ人を殺したことがあることをひけらかすような真似をすることはないが、そのうち知られてしまう可能性がないわけではない。捕まらないことが一番だが、こればかりは彼も自信を持って、自分は捕まらない、とは言えなかった。いつどうなるか分からないものの、人を殺せるうちは殺していたい。あの快感は、何物にも代えがたいものなのだ。

 殺害した人数が一気に四人増えたとしても、彼の日常に大きな変化はなかった。後輩も店長も、その他の仕事仲間も、彼を見る目は変わらない。深夜に訪れる客も同様だった。

「ありがとうございました」

 目当ての商品がなかったのか、何も買わずに出て行った客を、後輩が元気な声で送り出した。後に続いた彼の声とは温度差があり、まるで真逆である。

 後輩のような明朗な店員に対応される方が客も気分が良いだろう。声のかけやすさも、寡黙な彼よりも口数の多い後輩の方が遥かに上であることは間違いない。それでも彼も店員だ。話しかけられることが全くないわけではなかった。

 冷やかしに来ただけの客がいなくなり、店員である彼と後輩だけがコンビニ内に残される。深夜に訪れる客は元々多くはないものの、今夜は一段と店内の空気がのんびりとしていた。

「なんか、平和っすね」

 隣にいる人間が殺人鬼であることも知らずに平和だと口にする後輩は、彼をただの先輩だと信じ切っているようだった。警戒心は感じられない。後輩含め誰も、自分のすぐ隣に犯罪者がいると思うはずもない。

 裏で複数の人間を殺していたとしても、表で危険人物だと思われていなければ、その他大勢の中に溶け込めてしまえる。彼はどこにでもいる大人の男である。それは詐欺を働いているカナデも同じだろう。詐欺で得た金以外にも、真っ当に働いて得た金をカナデも持っている。彼らは極悪人でありながらも、きちんとした職場で働き、義務となっている納税をし、社会に貢献しているのだった。