徹底的に殺すことは後回しにし、彼は次の標的に近づいた。錯乱し、日本語かどうかも分からない言葉を発して無駄に足掻く男子の頭に狙いを定める。

 カナデがじっとこちらを凝視していた。そこはきっと特等席だ。彼は金属バットを握り直し、やはり躊躇なく、人の頭に叩き込んだ。男子の口から呻き声が漏れる。その声を消すために、彼はほとんど間を置くことなく、凶器と化した道具で再び頭をかち割った。

「とんでもないサディストですね。容赦なさすぎて逆に惚れ惚れします」

 人の膝裏に座って平然としているカナデも似たようなものではないかと彼は思ったが、口にはせずにスルーした。

 彼は忘れることなく残りの一人に目を向け、血液の付着した金属バットを握ったまま歩き出す。腰を上げたカナデが付いてくる気配を感じながら、死んだように横たわっている男子の傍に立ちその姿を見下ろした。

 男子は逃げない。体を起こそうともしない。今の間に死んでしまったのかと思ったが、それとなく息遣いは感じた。まだ生きてはいる。生きてはいるが、恐らくもう諦めている。自殺志願者を中心に殺してきた彼の勘が働いた。

 彼は金属バットを杖代わりにして膝を折り、瀕死の男子に尋ねた。

「どんな風に殺されたいか、希望はありますか」

 耳を澄ませて返事を待つ。男子はなかなか喋らない。喋る気力すら湧かないのだろうか。だとしたら、好きに殺すしかない。返答を待っていたら日が暮れる、否、夜が明ける。

 諦めて立ち上がろうとした時、足元から微かに声がした。男子が何か喋ったようだが、小さすぎて聞こえず、もう一回いいですか、と彼は聞き直して今一度耳をそばだてた。

「痛いのは嫌いです。痛いのはもう嫌です。もう楽になりたいです。楽にしてください。助けてください」

「そうですか。分かりました」