「こちらの手に渡っても危険なことに変わりはありませんね」

 彼は男子の首からパーカーを引き抜き、金属バットに指紋をつけないようにカナデから受け取った。男子は失神しているのか、もう既に息をしていないのか、首が解放されたとて動かなかった。しっかり殺るのは後でも良さそうだ。

 彼は目を上げ、まだ傷のついていない人間を順に見た。言葉を失くしていた男子たちが悲鳴を上げる。躊躇なく人の首を絞めた彼が金属バットを握り、見定めるような視線を向けたことで、更なる身の危険を感じたかのような必死の叫声だった。

 金属バットを持つ手を動かした。その瞬間、パニックに陥った男子二人が、彼の足の下にいる友人であろう男子と、リンチに遭い既に瀕死になっている男子を置いて逃走しようとする。

 一人はカナデに任せ、一人は殴ることを瞬時に決断した彼は、足を縺れさせる男子、先程襲いかかろうとしてきた男子の頭目掛けて金属バットをフルスイングした。躊躇がなく、また容赦もなかった。

 濁点がついたような鈍い音がし、パーカーの布越しから確かな手応えを感じた。地面に倒れるような重たい音も後に続く。苦しそうに呻く声も耳が拾う。

 嗜虐心が刺激され、彼の全身に快感が走った。初めてにしては上出来だ。気持ちいい一発だ。当たれば一撃で足止めできる金属バットは有能だ。

「凄い音しましたね」

 低い位置からカナデの声が聞こえ、彼は顔を向けた。カナデは約束通り捕らえたもう一人の男子を俯せに倒し、その上に腰を落ち着かせていた。男子は必死に踠いているが、カナデが座っている位置は膝裏辺りである。男子が膝をついて腰を上げたり足を曲げたりすることは困難な状況であった。

 彼はまだ元気な男子を殴る前に、這ってでも逃げようとし始めた男子の頭にもう一度金属バットを振り下ろして止めを刺した。動きが止まる。